from AASJ
IGF（インスリン様成長因子）は、インスリンと似たシグナル経路を活性化し、発生から成長、そして組織の維持に重要な役割を果たしています。脳の発生や維持にも関与し、神経の発生だけでなく、神経保護、シナプス可塑性、記憶の維持にも機能していることが知られています。高齢者ではIGFの発現量が低下しており、高齢者の認知機能の低下の一因と考えられています。
マックスプランク研究所の研究では、IGFが長期記憶成立に関与するメカニズムの一部を明らかにしました。この研究では、個々の細胞レベルでのシグナルを追跡することに重点を置いています。IGF-1の発現はCA1領域の錐体細胞でのみ見られ、非常に特異的な発現があることがわかりました。
さらに、スパインの変化を追跡するためにスライス培養を使用しました。IGF-1の欠損細胞では、スパインの大きさの維持がほとんどできないことが確認されました。また、この形態的な変化は生理学的な長期増強効果と関連していることも示されました。
さらに、IGFはグルタミン酸刺激によって局所的に分泌され、同じスパイン上のIGF受容体を刺激してスパインの形態や機能を維持する役割を果たしていることがわかりました。また、IGFシグナルはスパイン内でのシグナルへと変換され、受容体の活性化が始まり、スパインの形態変化を誘導することも明らかになりました。
この研究では、単一スパインのIGF受容体活性化状態をモニターする実験も行われ、その結果は説得力があります。さらに、海馬のCA3領域ではIGF-1の代わりにIGF-2が同様の役割を果たしていることも示され、記憶の成立における新たなヒントや課題も示されました。
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