from AASJ
免疫系に存在するシグナル分子が神経にも存在することはよく知られています。そのため、神経とは関係がないと思われていた分子が神経に発現して脳の機能を変化させることが報告されても、驚くことはありません。
しかし、デューク大学からの論文では、現在多くの患者に使用されている抗PD-1抗体が学習能力や記憶を高める可能性を示す研究が紹介されました。この研究では、PD-1が神経細胞にも発現していることが分かりました。この研究では、PD-1をノックアウトしたマウスを用いてさまざまな行動実験を行い、PD-1の欠損によって学習能力と記憶が高まること、また抗PD-1抗体の投与でも同様の効果が得られることが明らかにされました。
この結果は、生理的な意味はわからないものの、PD-1が直接的に記憶や学習に関与していることを示しています。今後は、行動実験だけでなく、神経生理学的および生化学的なアプローチを用いてPD-1が神経細胞でどのような機能を持っているかを調べる必要があります。
実験結果からは、PD-1が神経細胞の興奮を抑える役割があることが明確に示されています。PD-1の欠損により、興奮性が高まることが確認されました。また、PD-1は細胞内シグナルを抑制することでキラー活性を抑えていますが、神経細胞でも同様の機能が働いており、興奮性を抑える働きを持っています。そのため、PD-1の欠損によって神経の興奮性が高まり、シナプス形成が促進され、長期的な記憶が誘導されることがわかりました。
この研究結果は動物実験で得られたものですが、人間でも同様の効果が得られる可能性があります。実際に人間の脳スライス培養を用いた実験でも、同様のシグナル経路が働いていることが示されています。したがって、PD-1抗体を使用して脳の障害による学習や記憶の低下を改善する治療法の可能性があるかもしれません。ただし、現在のPD-1抗体はガン治療に使用されており、自己免疫反応を誘導する可能性もあるため、脳機能を標的とする治療は慎重に行う必要があります。
この研究結果は非常に驚くべきものであり、今後の研究でさらに詳細な
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